IoTは“誰も育ててくれない”問題


IoTは「使いながら育てていく」もの――そう思われがちですが、現実には売れないIoTを育ててくれる人はいないという厳しい壁があります。これは、IoTがハードとソフトの複合体であり、現場との密接な連携が不可欠であるからです。使ってもらえなければ、フィードバックは得られず、改善の糸口すら見えません。

筆者(福西)は、IoTの立ち上げにおいては単機能サービスから始めるべきだと考えています。というのも、初期段階ではユーザーからの意見は非常に得にくく、総花的なスマートホームのように「あれもこれも」詰め込んだ設計では、どこを改善すべきか判断がつかず、発展の方向性が曖昧になるからです。単機能で価値が伝わる設計こそが、利用者に「使い続けたい」と思わせる原点になるのです。

そして何より重要なのは、「提供したら終わり」ではなく、提供した後に、とことんまで利用者と歩み寄る覚悟です。とはいえ、それを現場に何度も足を運んで実施するのは非現実的です。だからこそ最初に設計すべきは、「いかに現地に行かずにアップデート・拡張できるか」という視点です。

現地に行かないと機能拡張できない、再起動はユーザー任せ――そういった設計では、バージョンの混在や運用の複雑化を招きます。実際、筆者自身も予約・遠隔制御IoTの提供を通じて「一度納品したら、いかに非接触で成長させるか」の大切さを痛感してきました。

IoTは“放っておいても使いこなしてくれる”ようなものではありません。とくに売れる前の段階では、現場からの期待値も低く、改善のきっかけが得られないことが大半です。だからこそ、育てるつもりで作るのではなく、育たない前提で完成させて出す。そして、後から静かに育てられるように「つながりっぱなし」「いつでも手が届く」状態を仕込んでおくことが、IoT成功の分水嶺となるのです。

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