― 技術より先に問うべき“ビジネスの骨組み” ―
🟦 はじめに
IoTは「つなぐ技術」であると同時に、“使い続けられる価値”を設計するビジネスでもあります。
ハード・クラウド・アプリの技術的構築だけでは、継続的な収益は生まれません。
足掛け10年、IoTスマートホームに携わってきた私だからこそ言える、IoTで事業を始める前に必ず考えておくべき11の問いを用意しました。
プロダクト企画、ビジネス設計、販売戦略までを一貫して見直せる内容です。
✅ 【事業構想フェーズ】
❓ 問い①:誰の“困りごと”を解決したいのか?
- 課題は明確か?それは本人にとって深刻か?
- 「便利」ではなく「今すぐ必要」と思ってもらえる内容か?
📌ヒント:本人の“行動が変わる”レベルの課題を想定しましょう
<コメント>
正直、日本のIoT、スマートホームは遅れています。動きが遅い。また日本経済の長期低迷からコストダウン提案が通りやすく、「便利」、「かっこいい」「手間が省ける」のみだと採用されません。「手間が省け、その結果○%コストダウン」まで言わないと採用いただけません。そして、そのコストダウンや利用目的を欲しているのは誰でしょうか?
❓ 問い②:その困りごとは「今」も存在しているか?
- 5年前の不便さが、今も同じままか?
- すでに競合が解決していないか?
📌ヒント:課題は“古いまま”ではなく、ユーザーと共に変化します
<コメント>
思いつきレベルだと一通り既に出尽くしています。もしあなたが気付かなかったとすれば、それは競合サービスがウケなかった証拠。なぜウケないのか?自分のアイデアはどこが異なるのか?を熟考してください。(競合は「UI・UXが良くない(内容は同じ)」というのも立派な解です」
❓ 問い③:IoTを使う“意味”が本当にあるのか?
- 単にネットに繋げばいいのか?
- IoTでなければ解決できない課題か?
📌ヒント:「可視化」「自動化」「予測」などIoTならではの強みを明文化する
<コメント>
単に便利だからはダメです。有料になったら、便利でも買ってもらえません。
なぜその人は買うのか?なぜそれが必要なのかを考える必要があります。
✅ 【プロダクト設計フェーズ】
❓ 問い④:データを“誰が”見て、どう活かすのか?
- データの送り手と受け手は誰か?
- 受け取った人の行動がどう変わるか?
📌ヒント:データが“読まれないまま”終わるIoTが多い。使われ方まで設計を。
<コメント>
データを外部販売すれば、「売れる」という考え方は感心しません。
そのような考え方の企業様に何社も会ってきましたが、上手く行ってません。
将来はあるかもしれませんが、現状は「集約した集合知を顧客に返す」(操作方法の改善、効果的な利用方法、最も皆さんが使う画面、体験の拡充)の方が良いと思います。
❓ 問い⑤:そのプロダクトは“毎日”触れるものか?
- 高頻度か、低頻度か?
- 利用頻度に合わせた通知やUX設計はできているか?
📌ヒント:「存在を忘れられるIoT」は、継続課金に向きません
<コメント>
これは、真剣に考えたほうがいい内容です。例えば、不動産賃貸物件に設置したスマートロックでも、利用者に価値が無いと判断されると、「取り外して」とか、「使わないので家賃を下げて」といった声がでてきます。「有用」「便利」を訴求し続けるUX設計が必要です
❓ 問い⑥:使い始めるまでの“ハードル”は低いか?
- 初期設定、ID登録、設置の手間が多すぎないか?
- 社内で導入ハードルが高くなっていないか?
📌ヒント:PoC(試験導入)がすぐできる“ミニパッケージ”を用意する
<コメント>
マス(大衆向け)プロダクトになると、意外にユーザのITリテラシーに足元をすくわれる事が多いです。そのために説明に出かける、電話レクチャーが必要になったり、使われなくなったり。。簡単に使える工夫が必要です。
✅ 【ビジネスモデル・提供体制フェーズ】
❓ 問い⑦:導入後に“やること”が増えすぎないか?
- 自社内にサポート体制があるか?
- 運用フェーズでの負担は適正か?
📌ヒント:BtoBでは「導入の簡単さ」より「運用のラクさ」が重要視される
<コメント>
「先ず使ってもらう」くらいの精神でないとダメです。初期にユーザ登録がせいぜい。。場合によっては、これもさせず、使わせたほうが良いです。サポート体制は必要ですが、まず「サポートに問い合わせさせない」と考えなければなりません。
❓ 問い⑧:どこで・誰に売るのかが明確か?
- エンドユーザーに直販?代理店?販社?
- “決裁権を持つ人”にどうリーチするか?
📌ヒント:IoTは「使う人」と「買う人」が異なる場合が多い
<コメント>
これ重要です。不動産(マンション等)において、管理費や家賃に利用料が含まれていると使いますが、入居者に払わせるととたんに解約されます。
法人であるなら、総務部やシステム部が負担しているサービスなら使いますが、自部門に価格負担させると解約されます。
決裁権者と利用者は別れている方が使われます。
❓ 問い⑨:最初の10社に、どう届けるのか?
- 導入実績がゼロの状態で、誰に信頼してもらえるか?
- 最初の10社が“次の100社”を引き寄せるロールモデルになるか?
📌ヒント:ユーザーインタビューや導入事例を初期から意識的に集める
<コメント>
日本でIoT、スマートホームを売るには、先ず事例です。当初の顧客は事例集めと割り切ってください。その事例にある使い方しか、引き合い、問合せ来ません。
なので、「こんな利用方法はしてもらいたくない」という内容はどんだけネームバリューがある企業事例でも載せるとその問合せばかりになります。
❓ 問い⑩:いつ“お金が回る”モデルになっているか?
- 初期投資と初期収益のバランスが取れているか?
- キャッシュフローは1年以内に健全化できるか?
📌ヒント:PoCフェーズでも小さく課金できる仕組みを持つと安心
<コメント>
開発費が大きくかかっているIoT製品はダメです。
必要なのは顧客体験なのですから、キャッシュフローは1年で健全化が理想です。
開発に時間とお金を掛けてはいけません。
🧭 推奨アクション
✅ チェックリストテンプレート(Notionでチェックボックス化可能)
- [ ] 本当にIoTである必要があるか明文化した
- [ ] データの活用者とアクションが定義できている
- [ ] 5社以上のヒアリングを実施した
- [ ] MVP開発スケジュールを持っている
- [ ] 最初の10社への導入戦略がある
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